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Essay

第44回 男のフォーマルウェア(6) 夜間の不祝儀

2024.06.27

夜間の不祝儀と言えば”通夜”ということになりましょう。
通夜そのものの意味が本来のものと今のそれが多少変わってきているようです。知らせを受けた故人の近親者あるいは親しい友人・知人が取るものもとりあえず死者のもとへ集まり、遺族を慰め、また死者を守るために傍らに夜通し付きそうというのが、本来の意味であったようですが、最近では比較的広範囲な人々に通知して故人を偲ぶ、いわば葬儀の第一段階のようになってきました。あわてて駆けつけるという本来の意味からすれば、ビジネスマンはビジネスウエアで、また旅行先から急遽戻ってきたならレジャーウエアのままで決して失礼になるものではありませんし、むしろその方が自然です。しかし昨今のように、通夜も新聞で告知されたりするような場合は、それなりの服装をなさった方がよいでしょう。

第41回 男のフォーマルウェア(3) 昼間の不祝儀」を参考にしていただきたいと思いますが、葬儀同様通夜の場合も当事者側と一般焼香客では当然服装が違ってきます。

当事者(遺族や葬儀委員といった人々)はブラックスーツや黒に近いチャコールグレイや濃紺のダークスーツで、片前あるいは両前の背広上下あるいは三つ揃えをお薦めします。

詳細は「第40回 男のフォーマルウェア(2) 昼間の略式な祝儀」「第41回 男のフォーマルウェア(3) 昼間の不祝儀」「第43回 男のフォーマルウエア(5)夜間の略式祝儀」をお読みいただきたいと思いますが、不祝儀ですので淡鼠色やクリーム色の替チョッキを着用するのは間違いです。
チョッキ着用の場合は必ず上衣・ズボンと共地のチョッキを着用してください。
またワイシャツは白、ネクタイは黒の結び下げとします。
アクセサリーは銀・パールくらいの目立たない地味なものがよいでしょう。ブラックスーツに喪章(勿論遺族だけで委員の方々は不要)が正しい服装です。
昔はモーニングでしたが何度も申し上げるように、モーニングは昼間の礼装ですから、夜間に着用することそのものが間違いです。
従ってモーニングの略式であるディレクターズスーツは同じ理由から着用できません。
かといって夜間の正装である燕尾服やタキシードは、慶事専用の礼服ですので、いくら正装といえども不祝儀に着用するのは間違いです。

受付係や弔問客の整理・案内係といったお手伝いの人々の服装は、必ずしも黒のスーツでなくてもよいでしょう。
会社関係等でユニフォームがあれば、それで臨むのが一番だと思います。黒以外の背広ならば濃鼠や濃紺のダークスーツに黒の結び下げネクタイで充分だと思います。この人々も遺族ではないのですから喪章を付けるのは間違いです。

一方、一般焼香客はやはり正式にするならば、黒色の背広に黒の結び下げネクタイということになるでしょうが、濃鼠や濃紺のダークスーツでも充分だと思います。この場合も遺族ではありませんので、くれぐれも喪章はつけないようになさってください。

昔は弔問客でもよくモーニングを着用したものですが、昼夜の問題とは別に、あまりに仰々しくなりすぎるので止めるべきだと思います。また最初に申し述べましたように、急な訃報でとりあえずお悔やみに…というのであれば、平服で充分ですし、むしろその方が当たり前だと思います。
ただ、事前に告知されているような通夜ならば、ある程度改まった服装で出かけるのがエチケットだといえましょう。

フォーマルウエアに限らず、服装というのはその場に居合わせた他の人々に不快感を与えない…というのが基本中の基本だということを考えれば、おのずから何を着るべきかある程度の判断はできるのではないでしょうか。

こんな時になんだあんな服装で…と後ろ指を指されないように装うことが大切です。
そして他人の服装が正しいか間違っているか、判断できるような常識を身に付けていただきたいと存じます。
繰り返しになりますが、「装うことは教養」なのです。

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