第40回 男のフォーマルウェア(2) 昼間の略式な祝儀
2024.03.21
前回より始めました男の礼装シリーズの第2回目は、昼間の略式祝儀について考えてみたいと思います。
比較的略式な結婚式の新郎・仲人・主賓、 あるいは格式の高い結婚式であってもごく一般のお客様として出席されるような場合は、この程度の服装でよろしいかと思います。 また会社関係の略式々典や歓送迎会、 学校行事や年始等の改まった訪問等幅広い機会が考えられます。
このような機会にお召しになっていただく、昼間のセミフォーマル・ウエア(準礼装)はブラックスーツ、 あるいはディレクターズスーツと呼ばれるものです。生地は黒、濃紺、濃鼠、霜降等のドスキン、バラシア、モヘア等モーニングコートの場合とほぼ同じものが使われます。
上衣はシングル一つ釦剣襟、或いは二つ釦下がり襟かセミノッチとし、普通のスーツの上着と大差はありません。かつて略礼服はダブルの上衣と言われた時代がありましたが、あれは日本独特のもので、「礼服だからダブル」という考えは洋服民族の間では存在しません。
チョッキは上衣と共地でも構いませんが、モーニングスーツ同様、祝儀の場合は淡鼠色の替チョッキを着用して頂きたいと思います。
チョッキはシングルでもダブルでも構いません。ヨーロッパではチョッキの白襟(スリップと言います)は第二次世界大戦後長い間見掛けることが無くなり、現代的ではなくなってしまいました。ところが日本では既製品や一部注文服店が相変わらず付けていました。弊社ではお客様に「現代的ではないのでお止めになった方がいいです」と申し上げています。ところがプリンス オヴ ウェールズ時代からチャールズ2世国王陛下が愛用されていらっしゃるため、一部で復活の兆しがあります。但し日本で見られるものとは明らかに襟自体の質感や取り付け方が違っています。
ブラックスーツとディレクターズスーツの決定的な達いはズボンです。ブラックスーツとは本来その名の通り“黒背広服”ですから、ズボンは上衣と共地ですが、ディレクターズスーツの場合ズボンはモーニングスーツと同じ縞ズボンを着用します。いづれの場合も裾の折り返しは勿論ありません。
ズボン吊り式の方がより良いのですが、略式ですからベルトレスでもベルト式でも構わないでしよう。縞ズボンに限っていえばモーニングスーツ用のものをそのまま流用されるとよいでしょう。モーニングスーツのコートを普通の黒の上衣に取り替えたものと思っていただければ閻違いありません。 いかにもモーニングの略式という感じがすると思います。 従ってモーニングスーツ同様昼間の礼服ですので、夜の席にはお召しにならないようご注意下さい。
その他の付属品については大体前回の昼間の正式祝儀“モーニングスーツ’’ の場合に準ずるとお考えいただいてよいでしよう。但し服装そのものが略式ということを考えて、総てにおいてあまり本格的である必要はないと思います。例えば、ワイシャツは白であればどのようなものでも良いでしょうし、靴はきれいに磨かれた黒靴であれば、スリッボン型でもよいでしよう。 又手袋、帽子は不要といった具合です。
ひと昔前は略礼装といえば“黒のダブルの上下’’というのがまさにユニフォームのように着られていました。
ダブルの方が正式でシングルの方が略式と間違って思い込んでしまった結果てしょうか…。その“黒の両前”も特殊な職業(?)の人たちが好んで着たのと、洋服に対する知識が向上したためか最近はシングル三ツ揃の方が都会的で洒落た感じがすると人気があります。
ブラックスーツは昼問の略式祝儀の時ばかりでなく、アクセサリーの使い方次第では昼夜を問わず、祝儀・不祝儀に大変幅広く使える万能礼服と申せましよう。 ネクタイをはじめとする細かいアクセサリーの使い分けについては、次の機会にまわすことにしますが、是非一着ご用意されると便利だと思います。