OVERCOAT
2024.12.20
シングル比翼仕立てのチェスターフィールドコートになります。
胸ダーツを入れウェストの絞りを利かせ、タイトフィットに仕立てることが多いですが、
もちろん同じ形でゆったり目にお仕立することも可能です。
名前の由来は、第6代チェスターフィールド伯爵ジョージ・スタンホープとされていますが、定かではありません。
19世紀初めに流行したそうですが、詳しい資料などは残っていないそうです。
古い絵では現在の形とほぼ同じものが見て取れます。
上衿には生地と同系色のベルベットがあしらわれており、
ベルベットを掛けないものより格式が高いと言われております。
ベルベットを掛けていないものはチェスターフィールドコートではない、
という方もいらっしゃいますが、私共の見解ではどちらでも結構だと思っています。
ベルベットを掛けず、且つ比翼仕立てではないものに関しては
セミチェスターフィールドコートと呼ぶのが相応しいでしょう。
余談となりますが、上衿のベルベットはフランス革命で処刑されたルイ16世への弔いで
イギリス人貴族が首に巻いた黒い布が起源と言われています。
ルイ16世が処刑されたのは1793年の事ですので、こちらの説は、あながち間違いではないと思います。
こういった歴史背景がある紳士服というのは本当に奥が深いものです。
他にも、背広のほぼすべてのディテールに起源があるのですが、
本当かどうか分からないものも混在していて、それはそれで面白いですね。
背広、という呼び方についても多くの節があるのはご存じの方も多いかと思います。
さて、現在最もフォーマルなオーバーコートとして言われることが多い
チェスターフィールドコートですが、
名前ばかりが先行し、ちぐはぐなモノも散見され胸が痛い思いです。
ですが、背広の上に着るオーバーコート=チェスターフィールドコート
と言われるくらい名前が通ったのは、
チェスターフィールド伯爵も天国でさぞお喜びの事ではないでしょうか。
上衿はコットンベルベットを掛けています。
フラップは玉縁を排した雨蓋が差し込まれている仕様になります。
薄くサラッと仕立てるのには高い技術が必要となります。
比翼仕立のラペルのロールも柔らかく返るようにお仕立てしております。
さて、フロントに入るはずの手星が
ほとんど見られないことにお気づきになった方もおられるでしょう。
フォーマルなオーバーコートには装飾をあしらうことを嫌い、
目立たないように手星を入れています。
この辺りは技術の見せ所なのですが、
逆にステッチを響かせて手縫いをアピールする方もいるので難しい世の中です。
長くなりました。ここまで辿り着いた方はほんの一握りだと思います。
ここまでお読みいただいた方、ご拝読いただき本当にありがとうございました。
高橋 翔
Fabric…PIACENZA ALASHAN TOPCOATS 550g/m
Price…¥1,265,000~
(生地によってはお求めやすい価格のものもございますのでお気軽にお問い合わせください)