銀座 高橋洋服店

Essay

第6回 セットアップ・スタイルを考える 2

2013.04.10

ジャケット&トラウザーズ セットアップ・スタイルを考える 2

前回、ネクタイを外したビジネス・ウェアとして、安易にスーツのネクタイを外すのではなく、替え上着に替えズボンをコーディネイトした、セットアップ・スタイルが最も相応しいと書きました。今回はこの装いについてもう少し詳しく説明したいと思います。

ここでいうセットアップ・スタイルとは、一般的にジャケットと呼ばれる(本来はスポーツ・ジャケットとかスポーツ・コートと呼ばれるべき)上着に、替えズボンをコーディネイトさせた装いを言います。

ブレザーはスポーツ・ジャケットの一種ですから、ジャケットのことをブレザーと呼ぶのは間違いですのでご注意ください。

さて、(スポーツ)ジャケットです。素材はツイードやカシミア、シルクや麻などで、ややラフな質感を持ったざっくりした感触の、多くの場合柄物の服地で作られた、トラウザーズ(ズボン)と共地ではない上着のことです。かつてはその名が示す通り、「スポーツをする時のジャケット」でしたが、服装のカジュアル化と共に旅行着や、休日の外出着になり、カジュアル・フライデーやクールビズの浸透で、次第にビジネス・シーンでも着用されるようになりました。

当然ながらかつてはネクタイ着用でしたから、ネクタイを締めての着用も可能ですし、ボタン・ダウンのシャツやカジュアルな感じのシャツにノーネクタイでの着用でもルール違反にはなりません。寒い時季ならば下にタートルネックのスゥエーターをお召しになってもいいでしょう。

このように、ジャケット&トラウザーズのセットアップ・スタイルは、ネクタイをすればビジネス・ウェアとしても通用しますし、ノーネクタイでも上着を羽織ることによって、ちょっと改まった感じのカジュアル・ウェアとしてご利用いただける、大変利用価値の高いアイテムです。ノーネクタイのスーツ姿はルール違反と言われても仕方ありませんが、セットアップ・スタイルならばノーネクタイでも決してルール違反にはなりません。スーツさえ着ていればノーネクタイでも“ビジネス・ウェア”。たとえネクタイを締めていてもセットアップ・スタイルは“カジュアル”といった日本的な勝手なルール作りは止めにして、そろそろ海外に通用するグローバルなドレスコードを確立する時期ではないでしょうか。

但し、ここで問題になるのが、ジャケットとトラウザーズのディテールです。漠然とした表現になってしまいますが、ただジャケットの形はしているものの、余りにもカジュアルな仕立の上着や、折り目を付けないようなディテールのトラウザーズはやはりビジネス向きとは言えないでしょう。

私共でも、以前に比べてスポーツ・ジャケットのご用命が格段に多くなってまいりました。特に、春から夏に掛けてはクールビズの影響でスーツの着用機会が減った影響でしょうか、相当数のご用命を頂いています。また、ヨーロッパの織元や商社が、競って新素材の開発に力を入れているため、以前は秋冬素材に比べてヴァリエーションが少なかった春夏のジャケット地ですが、今では色々な素材を楽しめるようになりました。

最後に一言アドヴァイス。ジャケット1枚に対して、2足以上のトラウザーズをご用意されると、違った雰囲気の着回しを楽しんでいただけるので大変便利です。

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